山口地方裁判所下関支部 昭和42年(タ)2号 判決 1967年7月19日
主文
本件訴を却下する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、「宮内発は原告の子であることを確認する。」との判決を求めその請求の原因として、
一、宮内発は、大正一〇年三月一六日、下関市大字関後地村一、〇六五番地高村チカの庶子出生として父宮内団之助届出、大正一〇年三月二六日同人の戸籍に入籍され、その後大正一五年一二月二三日に至つて、宮内団之助と高村チカが婚姻したことにより 両名の嫡出子となつている。
二、しかしながら、宮内発は、宮内団之助とチカとの間に出生した子でなく、実際は、高村家の養女となつた原告と大正九年一二月二三日原告と婿養子縁組をし、大正一五年四月六日協議婿養子離縁した原田証圓との間に出生した子である。
三、そして、宮内発は、昭和一九年七月一日、マリヤナ島において、戦死したが、国家のため犠牲になつた同人の身分関係を明らかにしてその冥福を祈るため、人事訴訟手続法第二条第三項により、検察官を被告として本訴請求に及んだ。
と述べた。
被告は、主文第一項と同旨の判決を求め、その答弁として、本件訴においては、検察官は被告としての当事者適格がない。
と述べた。
理由
一、先ず、職権をもつて本件訴の適否について検討するに、原告は、宮内発が戸籍上宮内団之助と宮内チカとの間に出生したものである旨記載されているが、真実は、原告と原田証圓との間に出生したものであるから、検察官を相手として、亡宮内発と原告との母子関係存在の確認を求めるものであるというにあるが、宮内発はすでに死亡しているのであるから、両者間の母子関係は過去の法律関係に属するものというべく、従つて、その確認を求める本件訴は、いわゆる確認の利益のない不適法な訴であり、かつ、かゝる場合、検察官を相手として訴を提起しうる成法上の根拠に乏しく、その性質上からも、人事訴訟手続法第二条第三項を準用ないし類推適用すべきものとは解し得ない。(大審院昭和一五年七月一六日判決、民事判例集第一九巻一二七八頁参照)
二、よつて、原告の本件訴は、この点において不適法であるから、その余の点について判断するまでもなくこれを却下すべきものとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。